(2024/8/13 05:00)
官による民間への関与はどうあるべきか。巨費の政府予算が投じられる半導体産業。復権へのラストチャンスを迎えた同産業への政府支援は、経済安全保障の観点からも欠かせない。ただ、ラピダスへの政府支援をいつまで続けるのか、出口戦略も問われている。どのタイミングで自立できるかが最大の焦点であり、行方を注視したい。
経済安全保障で重要物資に指定された半導体。今、政府は復権に向けて強力に進んでいる。もはや日本の半導体メーカーは単独で世界に伍していく力はないからだ。政府は半導体産業支援に、2021―23年度に総額3・9兆円の予算を組み、さらに増額に動こうとしている。
24年2月には台湾積体電路製造(TSMC)が熊本工場(熊本県菊陽町)を開所した。第2工場の建設も決めており、両工場合わせた設備投資額は200億ドル(3兆円)を超える。政府は両工場に1・2兆円を拠出する。経済安保に資するほか、地域の雇用や賃上げに貢献しており、費用対効果の観点からも納得できる政府支援と言える。
一方、政府支援の今後のあり方で注視されるのが、北海道千歳市に最先端半導体工場を建設するラピダスだ。27年に回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の量産化を目指す。同社はこれまでに9200億円の政府支援を受けているが、量産には総額で5兆円の資金が必要で、財源確保が大きな課題になる。
同社の量産へのハードルは高い。開発を軌道に乗せ、安価で生産する技術や販売先も獲得する必要がある。台湾・韓国勢も2ナノメートルの実用化を急ぐ中、27年までに収益化の見通しを明確にすることが求められる。
政府はラピダスの量産に必要な資金を確保するため、同社への融資に政府保証を付ける支援策を視野に入れる。補助金の支出が抑えられる利点があり、産業支援と財政規律を両立できるとみられる。ただラピダスが返済困難となれば、最終的に国民負担となる。ラピダスは政府の支援を受けて事業を軌道に乗せられるかが焦点になる。早期の事業化と自立に期待したい。
(2024/8/13 05:00)