インタビュー/ハーベス取締役生産本部長・田中祥生氏 環境規制対応、脱フッ素化へ

(2024/8/15 12:00)

―車や複合機など多様な分野で使われる特殊潤滑剤の製造を手がけています。

「当社の売り上げの多くを占める主力事業だ。ほんの数グラムという少量でも、10年以上潤滑し続ける機能性の高さが特徴。例えば、自動車の車内にあるドリンクホルダーや各種スイッチ類といった内装部品にも多く使われている。当社の特殊潤滑剤を使うと、これが滑らかに動作してストレスなく利用できるほか、製品の摩耗も防ぐこともできる。国内外の化学メーカーから、約200―300種のフッ素や炭化水素系の原料を仕入れて製造している」

―新型コロナウイルスの感染拡大の影響はありましたか。

「フッ素系の材料が不足し、世界中で取り合いのようになった。医療や半導体業界でも類似した原料を使うため、そちらに多くが流れてしまい、商品を製造できず顧客を待たせてしまう状況に陥った。代替品を探したところ、中国の化学メーカーからの調達網を確保して、安定して製造できるようになった」

「半面、今度はコロナ禍を機に高まった中国依存度を下げる必要が出てきた。コロナ前は、中国からの仕入れが金額ベースで1割以下だったのが、現在は3割超に高まった。チャイナリスクを踏まえ、バランスの取れた調達網を築く必要がある」

  • 国内外の化学メーカーからフッ素や炭化水素系の原料を仕入れて製造している(自動車のドリンクホルダーとスイッチ類)

―国内外での環境規制も注視しています。

「フッ素は社会生活や経済活動に欠かせない。しかし環境への影響を懸念して、欧州連合(EU)を中心に有機フッ素化合物(PFAS)の規制が強まっている。当然、国内外の原料メーカーらが敏感に反応し、“脱フッ素”を意識してPFAS製造から撤退する動きも出てきている」

―どう対応しますか。

「一つは、調達部門と研究開発部門が一体となって代替品を探すこと。もう一つは、自社開発にチャレンジすることだ。環境への影響が少ないフッ素系の材料や脱フッ素材料の開発に着手している。ハーベスR&Dセンター(埼玉県伊奈町)ではこうした新素材も開発している」

(2024/8/15 12:00)

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