社説/パリ・パラリンピック 障がい者雇用促す契機にしたい

(2024/8/28 05:00)

第17回夏季パラリンピック・パリ大会が28日(日本時間29日未明)開幕する。日本選手団は175人と、海外開催のパラリンピックでは過去最多となる。日頃の実力を十分に発揮し、晴れの舞台で躍動してほしい。

他方、産業界は取り組みが不十分な障がい者雇用の促進を考える契機にしたい。障がい者の能力を正当に評価し、その能力を有効に活用することは、人手不足の日本経済が持続的に成長するための解の一つになる。

今大会は9月8日までの12日間にわたり、22競技・549種目で熱戦が繰り広げられる。185カ国・地域から約4400人のアスリートが参加する。日本選手団は学生のほか、企業や自治体、団体などさまざまな職場に在籍する。自身の不断の鍛錬はもとより、職場や関係者の理解・協力があっての出場であろう。多様な価値観の共有は、スポーツの世界みならず産業界でも推し進める必要がある。

第1回夏季パラリンピックがローマで開かれた1960年、日本では「身体障害者雇用促進法」が制定され、76年に事業主による雇用が義務化された。2018年に法定雇用率が定められている。政府は障がい者雇用を促すため各種補助金を用意。ハローワークなどからの紹介で雇用を引き受けた場合などに助成金が支給される。厚生労働省は優良な取り組みと認めた中小企業を認定する「もにす認定制度」を20年度に創設。企業と障がい者が「ともに進む」の意味を込め、雇用を促している。

だが厚労省調査によると、23年に法定雇用率を達成した企業は全体の50%に過ぎない。2・5%の同雇用率は26年7月に2・7%に引き上がる。全ての対象企業が新基準を満たすよう、一段の理解・協力を求めたい。

障がい者に関する職場でのトラブルも少なからず表面化している。同省の23年度調査では、ハローワークに寄せられた障がい者の差別禁止・合理的配置の提供義務に関する相談が245件あった。表面化していない事案もあるはずだ。企業と障がい者が相互理解を深める職場環境も早期に整える必要があろう。

(2024/8/28 05:00)

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