(2024/8/29 05:00)
各省庁が財務省に提出する2025年度予算の概算要求が31日に締め切られる。24年度まで3年連続で110兆円超だった概算要求総額がどこまで膨張するかが焦点になる。岸田文雄首相が秋の策定を目指している経済対策を次期総理・総裁が引き継げば、補正予算の編成を伴う歳出圧力がさらに強まる。政府が目指す25年度の財政健全化目標を達成できるか懸念が残る。
国の一般会計歳出の6割弱を社会保障と国債費で占める。厚生労働省が28日発表した概算要求額は34兆2763億円と過去最大だった。社会保障費が高齢化に伴って膨張したためだ。国債費も、財務省が自民党に示した概算要求案は28兆9116億円と、24年度当初予算の27兆円から大幅に増加。長期金利の上昇を反映し、利払い費の計算に使う想定金利を1・9%から2・1%に上げた影響が大きい。
各省庁の要求に歯止めをかけるはずの概算要求基準が形骸化している点も懸念される。少子化や賃上げ対策は、要求段階で金額を示さない事項要求が認められ、4・2兆円の特別枠も設けた。特別枠は裁量的経費を1割削減すれば、削減額の3倍まで要求可能だ。各省庁の歳出圧力を強めかねず、財務省による厳格な精査が求められる。
政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が25年度に黒字化する可能性を試算している。物価高や堅調な企業業績による税収増を見込む。だが試算は補正予算の編成を想定していない。岸田首相は電気・ガス料金の補助に続く第2弾の物価高対策として、低所得者に給付金を支給する経済対策の策定を目指している。次期総理・総裁が補正予算を編成した上で早期の解散総選挙に動く可能性には留意したい。
経済成長だけでは、財政や社会保障の持続可能性を確保できない。全世代型社会保障による歳出改革やEBPM(証拠に基づく政策立案)による歳出の徹底検証が必要だ。「金利のある世界」も本格的に迎える。25年に参院選も控える中、次期総理・総裁は財政規律にも目配りするのか、楽観せず注視したい。
(2024/8/29 05:00)
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