社説/災害に備える㊥「能登」教訓の防災対策、迅速に

(2024/9/2 05:00)

政府は能登半島地震の教訓を踏まえ、防災・減災対策を強化する。建物の耐震化を全国で推進するほか、大規模災害の発生時に各省庁1000人規模の担当者が即座に支援に入る体制を整える。原発立地地域では「屋内退避」できる環境などを整備するという。能登半島地震に見舞われた被災地の復旧・復興を急ぎつつ、この震災の教訓を今後の大規模災害に生かしたい。

国土交通省は2025年度予算の概算要求で、防災・減災対策を重視した。堤防の整備などの「流域治水」や、大規模地震対策を推進する。中でも、能登半島地震で問題視された住宅の耐震化の強化を全国で促す「建築物防災力緊急促進事業」を進めるほか、上下水道の強靱(きょうじん)化にも取り組む。能登半島地震では2・6万棟もの住宅が解体を予定する。耐震化の事前防災を講じていれば、救えた命が少なくなかったと悔やまれる。

政府は、大規模災害対応の司令塔を担う「防災監(仮称)」のポストを25年度に内閣府に新設する方針を決めた。防災監は各省庁・自治体との調整役となり、災害発生から復旧・復興まで一貫して対応する。各省庁1000人規模が災害に即応できる体制を整えるという。機動的な体制を早期に築いてほしい。

能登半島地震では、北陸電力志賀原子力発電所の周辺で住民が孤立するケースがあった。内閣府は、25年度概算要求で自治体への交付金を24年度当初予算比で1・5倍とし、被ばくを回避する屋内退避の体制を強化する。安全・安心対策を全国で講じ、原発への信頼を高めたい。

能登半島地震の発生から8カ月が過ぎた。仮設住宅が整備され、石川県は1次避難所を9月末に、ホテル・旅館などの2次避難所を年内に閉鎖する方針を決めた。だが復旧・復興への道のりは長く、予定する2・6万棟の家屋解体も完了は1割にとどまる。膨大な災害廃棄物の処理も課題になる。7月から新潟県への海上輸送が始まったほか、東京都も横浜・川崎両市と連携して9月にも廃棄物を受け入れる。自治体間の広域連携により、復旧の歩みも加速したい。

(2024/9/2 05:00)

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