(2024/9/5 05:00)
人手不足や後継者問題に悩む中小企業にとって、M&A(合併・買収)による事業譲渡は有力な選択肢の一つになる。ただ企業の売り手と買い手を結ぶ仲介事業者の中には、悪質な営業活動を展開し、売り手が不利益を被るケースが少なくなかった。経済産業省は、中小企業のM&Aに関する指針を8月30日に改定し、悪質営業の排除に乗り出すことになった。中小企業のM&Aを促し、産業の新陳代謝が進展する契機としたい。
経産省は指針「中小M&Aガイドライン」を改定した。不透明だった仲介手数料の算定基準の公開を求め、違反した事業者は社名を公表する。手数料のほか、事業者が提供する業務や担当者の保有資格、成約実績も売り手に説明する必要がある。手数料の引き下げ効果を含め、仲介事業者を利用しやすい環境に改善されると期待したい。
仲介事業者は、企業の売り手より買い手の意向に強く反応する利益相反が指摘されている。指針では、事業者が買い手に便宜を図り、不当に低い譲渡額に誘導する行為を禁止し、売り手側が不利益を被らないようにする。一方、売り手が希望した譲渡額を上回った場合、一定割合を報酬として要求する行為も禁じる。企業の売り手、買い手の双方に中立・公平なM&Aを実現し、中小企業の生産性と企業価値の向上につなげたい。
不適切な買い手も排除する。経営者保証の移行をめぐるトラブルや、M&A成立後に売り手の資金を個人口座に移し、資金繰りが悪化する事例もあるという。指針では、買い手に事業を引き継ぐ能力があるかを仲介事業者が調査し、売り手に事前説明することも義務付けた。従業員の雇用継続や技能伝承に資する対策として評価できる。
“二つの中小政策”に期待したい。経産省は、後継者や収益力で問題を抱える中小企業のM&Aなどを後押しする一方、国内投資に意欲的な中小企業の規模拡大、中堅企業への移行を優遇税制などで促す。「金利のある世界」の本格的な到来も見据え、産業全体の収益基盤と競争力の強化を急ぐ必要がある。
(2024/9/5 05:00)
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