(2024/9/13 05:00)
日本製鉄によるUSスチールの買収計画に、米国の政治的な圧力がかかっている。日米の経済団体は、買収計画を審査している対米外国投資委員会(CFIUS)の議長・イエレン米財務長官宛てに連名で書簡を送り、強い懸念を表明した。書簡は11日付。買収計画は米大統領選の“政争の具”とされ、合理的な根拠がないまま阻止される可能性がある。買収阻止は、結果として中国鉄鋼業を利する。CFIUSには、適正な手続きと公正な審査を強く求める。
書簡は、経団連のほか、全米商工会議所などが連名で送付した。USスチールが本社を置く東部ペンシルベニア州は大統領選の激戦州。買収計画に反対する全米鉄鋼労働組合などの争奪戦が繰り広げられ、トランプ、ハリス両候補は明確な根拠なしに買収反対の立場を表明した。日米民間企業による買収計画が政治問題化したのは残念だ。
CFIUSは、日鉄による買収が米国の鉄鋼生産能力を縮小させ、「国家安全保障上の懸念」に当たるとし、バイデン大統領に勧告する可能性がある。大統領が買収阻止の行政命令を下す前に、日米の経済団体が動いたのは適切な対応と言える。
日鉄の高度な生産技術と、USスチールが持つ最先端の電炉技術などを融合し、脱炭素を加速することは米国の国益にかなう。米国内での生産増強は経済安全保障にも資するはずだ。
買収阻止となれば、USスチールは合理化を迫られ、製鉄所閉鎖や本社移転などが視野に入る。独占禁止法上、米国の同業との統合も難しいとされる。日鉄はUSスチールの製鉄所に計13億ドル(約1900億円)を追加投資し、買収後には取締役の過半数を米国籍にするとも発表している。買収阻止が米国経済にマイナスなのは明らかだ。
世界の粗鋼生産の5割以上を中国が占める。米国による同盟国企業の買収阻止は、経済安全保障のリスクを高める皮肉な結果となりかねない。日鉄は買収申請をいったん取り下げ、大統領選後に再申請するなど、考え得る選択肢を駆使し、所期の計画を遂行してもらいたい。
(2024/9/13 05:00)
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