ニチリン、セミナーで異文化理解

(2024/9/17 12:00)

業務を言語化、不安解消

  • 国籍を問わず、多様な人材が同じ環境で働いている

自動車や2輪車用ブレーキホースを手がけるニチリンは、兵庫県の本社・工場と海外9カ国の子会社を軸として国内外に製品を展開する。グローバル規模での競争力が必要な事業環境では、「人材の多様性こそが企業の成長エンジンになる」との考え方が社内で共有される。さまざまな文化や価値観を持つ人材を包摂し、誰もが働きやすい風土づくりに社員が参画することで、人材の多様性に富む企業への変化を進める。

現在、ニチリンは正社員約400人のうち、約30人が外国籍の社員。国籍はベトナムやインドネシアといったアジア圏だけでなく、メキシコやモロッコと多岐にわたる。所属部署も生産技術や品質管理、人事部など幅広い。海外顧客の訪問や開拓業務のほか、各部門の専門スタッフとして子会社とのやりとりや社員の指導で活躍する。

企業が人材の多様性を育む際に難題となりやすいのが、異文化理解といった社員のマインド改革だ。ニチリンにおいても、ここ数年で外国人採用を急速に進め、外国人雇用比率が高まると、「日本人社員が外国人社員との接し方が分からず、現場が戸惑ってしまう」(稗田清志人事総務部部長)課題が浮き彫りになったという。

  • セミナーでは一度に20人程度が参加し、異文化理解について学んでいる

そこで、2023年度から役員や管理職などを対象に「多様性受容セミナー」を始めた。セミナーは、異文化や価値観の違いによる考え方の差異を理解し、それに配慮した言動を行う大切さを学ぶ。異文化に対する意識改革を目的としたセミナーだが、受講者からは「出身だけでなく、世代や性別による差に対する理解にもつながった」と好評だという。

誰もが働きやすい職場環境を目指し、教育制度の改革にも着手する。「先輩の姿から学ぶもの」と考えられがちな技術習得やキャリアの築き方といった点の言語化に着目し、業務フローや外国人社員のキャリア指導方法の改善を進めている。社員一人ひとりが「言葉にしなくても分かるだろうと思うことでも、きちんと言語化する」(稗田人事総務部部長)意識を持つことで、業務上で生じる誤解や不安を解消し、多様な人材が活躍できる環境づくりに生かす。これらの取り組みは、「業務内容そのものを見直すきっかけ」(同)にもなり、作業の効率化にも貢献している。

今後は人事制度改革にも取り組むとする。国籍や性別に限らず、社員が仕事にやりがいを持てるよう、インセンティブやポジションなどで柔軟な仕組みを導入し、人材の多様性の深化を目指す。

(2024/9/17 12:00)

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