(2024/9/27 12:00)
筑波大学発スタートアップのエアロフレックス(茨城県つくば市、堀井樹社長)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力して火星探査飛行機の実現を目指している。主力事業の飛行ロボット(ドローン)の開発技術を生かし、宇宙開発に挑戦する。2035年前後の火星への打ち上げを目標に研究を進める。堀井社長は「火星開発の一助になれば」と意気込む。
火星探査飛行機は、火星地表面を広く調査する飛行機。地球から打ち上げた火星着陸機が火星の大気圏に突入した際、十分に減速してから、飛行機を上空で放出して滑空させる構想だ。複数機を一度に飛行させる広範囲の群探査で、詳細な調査が必要な場所のめどをつける。
機体は火星の飛行環境に合わせて設計する。全長300ミリ×全幅800ミリメートルほどを想定する。火星の大気は地球比で密度や気圧が100分の1程度。飛行機にとって揚力を獲得しにくい環境だ。主翼を前後に2枚搭載したタンデム翼機にしてより大きい揚力を発生させるほか、翼を軽量なカーボン製にして、より長距離飛行ができるように工夫する。
火星への打ち上げに向けた準備も着実に進める。エアロフレックスとして、24年度内に地上数メートル程度からの滑空試験を始める。ドローンなどで上空まで飛行機を運び、滑空させる。数年以内にJAXAと共同で、火星の大気環境に近い、地上数キロメートル程の高高度からの飛行も実験する方針だ。
火星飛行機の開発に着手したのは、同社を設立した21年頃。同じく火星飛行機を研究するJAXAの大山聖教授と知り合い、研究を本格化した。当初は動力を持った回転翼機を想定していた。機構をシンプルにして確実な飛行を確保することと、群探査の実現を考慮し、23年末から固定翼機に方針転換した。
現在は、飛行機の構想が固まり、試作機の製作や試験に着手した段階。地球から火星までは、火星突入機内に固定翼を折りたたんで運ぶため、放出時に「翼が火星環境でも確実に展開できるようにすることが課題だった」(堀井社長)と振り返る。バネや空気抵抗を利用した確実性の高い機構を採用した。
各国で進む火星探査では、人工衛星や地上を走行する大型の探査車(ローバー)の開発が主流。しかし「人工衛星では観測しきれない地形も多い。またローバーだけでも、広い火星地表面のカバーは難しい。火星飛行機は、その間を補完する」(同)と強みを語る。
将来的な火星飛行機の本格運用も構想を練る。火星の地表面から飛行機を高高度まで打ち上げ、滑空させる探査システムを考案する。より任意性が高く、探査回数も増やせる可能性があるという。
火星は水や有機物の存在が示唆されており、移住を視野に入れて研究開発する企業も少なくない。堀井社長は「月に焦点を当てる企業も多いが、その先は必ず火星が来る。星間輸送のプラットフォームにも転用できるのでは」と目を輝かせる。
(2024/9/27 12:00)
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