(2024/10/8 05:00)
2024年のノーベル賞受賞者の発表が始まった。7日の生理学・医学賞に続き、8日に物理学賞、9日に化学賞の受賞者が順次、決まる。研究開発力の低下傾向が指摘される日本は、継続して受賞者を出すことができるのか。「国際卓越研究大学制度」は、研究力向上への起死回生の手段とされる。優秀な若手研究者を惹(ひ)き付ける世界最高水準の環境を整備し、人材の確保・育成を強力に進めたい。
自然科学3賞の日本人ノーベル賞受賞者(米国籍を含む)は2000―23年に20人を数え、米国に次ぐ2位だ。だが、文部科学省の「科学技術指標2024」によると、注目度の高い論文数(他の論文に引用された回数が上位10%に入った論文数)で日本は13位とスペインや韓国より下位。1位は巨額の政府資金をつぎ込む中国だった。20年ほど前、日本は4位だったが、その凋落ぶりが懸念される。
自然科学3賞で受賞時に外国籍だったのは南部陽一郎氏(08年物理学賞)、中村修二氏(14年同賞)、真鍋淑郎氏(21年同賞)の3人。真鍋氏は、日本に戻りたくない理由の一つを「周囲に同調して生きる能力がないから」と指摘していた。自由に長期間にわたり研究に打ち込める環境整備を急ぐ必要がある。
国際卓越研究大学制度は、国が設立した10兆円規模のファンドの株式運用益などを卓越大学に配分。卓越大学は新たな財源を得て、世界トップクラスの研究者の招聘(しょうへい)や若手研究者の育成に充てることができる。研究時間を十分に確保し、研究者の負担も軽減させるという。
24年に卓越大学への認定が決まったのは東北大学の1校のみだった。認定されるには、大学の過去の実績などより変革への意思が重視されるという。応募した各大学は改革への意識の甘さを強く認識させられたのではないか。近く2回目の公募が予定されており、10月に発足した東京科学大学なども応募を予定しているという。複数の卓越大学群が日本の研究力向上に向けた強力なけん引役となり、将来のノーベル賞候補者の確保・育成が促されると期待したい。
(2024/10/8 05:00)
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