(2024/10/21 12:00)
スキルシステムズ(大阪市東淀川区、杉本浩社長)は、希少がんの一つである成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の早期発見に向けた人工知能(AI)画像診断支援システムを開発中だ。ATLは血液画像での診断が難しく、早期発見ができずに末期症状で見つかるケースが多いことが課題。AIを活用し早期の発見・治療につなげる。
ATLは白血球の一種であるリンパ球が腫瘍ウイルス「HTLV|1」に感染し、腫瘍化して発症する。現在は1症例当たり数百枚の血液画像からATL疑いの細胞が何割あるかを目視で確認している。目視で見分けが付きにくい細胞もあり、医師や検査技師の診断にバラつきが出る。患者が初めに受診するかかりつけ医で診断が付きにくく、専門医療機関への受診が遅れ、発見が遅れる傾向にある。
「当社のシステムを通じて社会課題を解決したい」(開発責任者の横田祐介開発第2本部ソリューション2課マネージャー)との強い思いから、経済産業省の2022年度成長型中小企業等研究開発支援事業(Go―Tech事業)に採択され研究開発を開始した。
米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の仮想サーバー「アマゾンEC2」を活用し、患者の血液画像からATL疑いがあるリンパ球と正常な白血球を数秒で分類できる独自のAIプラットフォームの開発を進めている。患者の血液画像をウェブ上にアップロードすると、数秒でATL疑いの細胞が何%あるかを割り出す。その数値データを参考に、3%以上であれば医療機関への受診が必要など、医師は専門医療機関の検査が必要かどうか判断できる。
同プラットフォーム上でATL疑いのあるリンパ球を分類する独自のAIモデルは、約10万枚の細胞画像データなどを基に開発した。異常・正常な細胞画像を、ATL疑いが強い・弱いといった7種類に分類し、その8割を学習用データにしてAIモデルを構築。残り2割を評価用データとし、機械学習アルゴリズムを最適化して診断精度を高めた。
AI画像診断支援システムの検査精度は96・3%に達する。同システムを活用し、地域の病院や診療所でもATL疑いのある患者を見つけ、迅速に専門の医療機関で検査することで、早期発見・早期治療につなげる。
スキルシステムズは25年4月にシステムの実用化を目指す。医療機関や検査会社への展開を見据える。横田マネージャーは「健康診断や人間ドックの血液検査の一つのサービスとなってほしい」と展望を描く。
(2024/10/21 12:00)
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