(2024/10/30 05:00)
2024年は多くの国で選挙が行われる「選挙イヤー」と呼ばれる。心配なのは、世界で与党の苦戦や敗北が相次いでいることだ。物価高や所得格差、高失業率、移民流入など内政への有権者の不満が噴出している。日本も与党が厳しい審判を下され、米大統領選の行方も予断を許さない。各国の不安定な政治基盤は、中ロなどの強権勢力に付け入る隙を与え、国際協調が乱されかねない。警戒したい。
4月の韓国総選挙では物価高や高齢化、医師不足などを争点に最大野党が議席の過半数を占めたほか、6月のインド総選挙でも所得格差などを背景に与党が過半数を割り込んでいる。
7月の英総選挙では14年ぶりの政権交代に至った。欧州連合(EU)離脱による輸入コストの増大、移民減少の人手不足に伴う物価高騰に対し、有権者の不満が募っていた。有権者が内向きの政治を支持し、政権交代に発展した現実は示唆に富む。
EUでは内向きの「自国第一」の右派が伸長した。6月の欧州議会選挙では、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー高騰や移民・難民の流入を受け、EUに懐疑的な右派政党が議席の2割以上を獲得した。移民流入と物価高で国が分断している米大統領選と構図が重なる。
その米大統領選が11月5日に迫る。民主党のハリス副大統領と野党・共和党のトランプ前大統領は最終盤でも接戦を繰り広げ、予断を許さない。トランプ氏再選となれば、ウクライナが領土を割譲した形で終戦となりかねず、中国の台湾統一を勢い付かせる。現政権よりイスラエル支持を強め、中東情勢がさらに悪化する可能性もある。パリ協定(気候変動問題に関する国際的枠組み)からの再離脱も含め、同氏への懸念は尽きない。
自国第一の保護貿易は世界の分断をさらに深め、世界の権威主義的なリーダーがこれを歓迎すると警戒する必要がある。
日本は衆院選で、自公両党の議席が過半数を割った。政治基盤を早期に立て直し、政治不信を払拭してほしい。同時に世界にも目を配り、不安定な国際秩序の維持へ重責を担いたい。
(2024/10/30 05:00)