社説/APEC・G20サミット 存在感増す「中国」の外交注視を

(2024/11/21 05:00)

二つの国際会議が相次ぎ開かれた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)だ。いずれの会議も「米国第一」を掲げるトランプ米次期政権を警戒し、多国間の枠組みの重要性を確認した。ただG20サミットの首脳宣言からはトランプ氏を刺激する「反保護主義」の文言が消え、自由貿易体制が後退しないか懸念される。

一方、中国の習近平国家主席が、両会議で存在感を増していた点にも注目したい。国際協調軽視のトランプ政権を見据え、西側諸国に接近する、したたかな外交の行方も注視したい。

21カ国・地域が参加したAPEC首脳会議は、自由で開かれた貿易を推進する首脳宣言を採択し、16日に閉幕。G20サミットでも、パリ協定(気候変動問題に関する国際的枠組み)実現に向けた決意などが強調された首脳宣言が18日発表された。両会議とも、多国間の枠組みを重視する姿勢は示されていた。

トランプ氏は大統領就任後、パリ協定再離脱のほか、一律10―20%、中国に60%の関税を課すことを示唆する。世界経済の減速は避けられず、各国がトランプ氏の政策に身構えるのは当然だ。ただG20サミットではトランプ氏寄りの首脳もおり、首脳宣言で保護主義批判の表現が後退。国際協調の足並みが乱れかねない大きな懸念も残した。

今回の二つの会議で習氏の存在感が増していた。新興国への支援強化など多国間の枠組み重視を訴え、G20サミットに合わせて独仏英豪の首脳とも相次ぎ会談。新興国の取り込みや西側陣営との関係改善を図った。国際協調の混乱に乗じたような、狡猾な外交には留意したい。

APEC、G20とも各国の利害から、ウクライナと中東の紛争に踏み込めず、国際社会の分断をあらためて鮮明にした。石破茂首相は一連の会議で、国際秩序の重要性や、国連安全保障理事会の改革を訴えていた。米国の国際社会での影響力が低下しかねない中、石破首相は安保理改革に賛同する新興国などとの連携を強化し、国際秩序を維持する役割を担う必要がある。

(2024/11/21 05:00)

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