(2024/11/21 12:00)
名古屋東部陸運(愛知県豊田市、小幡哲生社長)は、自動車部品、住宅部材のトラック輸送が主力だ。トヨタグループが顧客で、愛知県三河地方を中心に東北、九州までカバーする。比較的安定した顧客層に支えられながらも「物流の2024年問題」に直面。「協力会社との関係性が変わりつつある」(小幡社長)中で自社配送の拡大にかじを切る。狙いはサプライチェーン(供給網)を絶やさないためのリスク回避だ。
働き方改革と賃上げという社会情勢の変化は中小の配送業者に価格競争力を付けた。同社も協力配送会社からの値上げ要請には可能な限り対応。発注側が値上げを容認する流れは中小配送業者が顧客を選ぶことになり、「『下請け業者が仕事をください』という時代ではなくなった」(同)という。
同社が保有するトラックは現在350台。このほかに協力会社を含め1500台程度を動員する。しかし協力会社が顧客を選ぶ時代を見据え、今後は自社保有の台数を500台に引き上げる構えだ。
このため2023年からドライバーの増員に動き出した。23年度には30人増員し350人体制とし、24年度も同程度の増員を目指し、将来は500人体制とする。とはいえ物流会社にとってドライバーの確保ほど大きな難問はない。小幡社長は「賃金と働きやすさ、働きがいの3点がカギとなる」と説明する。
賃金は24年度から3年で10%の賃上げを目指す。「ただ賃金を重視する社員は高い賃金の企業があれば、そちらになびく」(同)とし、小幡社長がこだわるのは働きやすさと働きがいだ。働きがいについては「モノだけでなく、お客さまの夢も運んでいる意識を大事にしたい」(同)。
同社のドライバーは荷主であるトヨタホームの工場見学に行くという。トヨタホームの生産ラインには住宅の顧客が工場見学に訪れた際の様子やコメントが紹介されている。小幡社長は「お客さまの夢が詰め込まれた商品を目の当たりにして、お客さまの思いを感じ取ってもらうのが狙い。そこに仕事のやりがいを見いだしてほしい」と狙いを明かす。
一方で顧客の供給網の維持には協力会社との連携も欠かせない。ビジネスライクな関係だけでなく価値観を共有し、信頼関係を築くことで、効率的な配送体制を確立を目指し、そのため主要協力会社20社を中心に「経営者間のコミュニケーションを強化したい」(同)という。自社ドライバーの育成と協力会社との連携が同社を成長に導く両輪となる。
(2024/11/21 12:00)
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