航空宇宙ビジネス・フロンティアへの挑戦(65)九州電力 衛星画像から森林資源量

(2024/11/25 05:00)

500万平方メートルも高精度推計 AIが本数と「樹冠」で算出

  • 九電が開発した森林分析システムでAIが樹木を検出するイメージ

九州電力が“空”に関する事業で存在感を見せている。衛星画像を活用する分野では、人工知能(AI)を用いて森林資源量を推計するシステムを開発した。足場の悪い現地での人手による実地調査をなくすことで、効率的な資源量調査につながると期待する。このほか飛行ロボット(ドローン)を用いたビジネスでは、機材の強化や事例の積み上げで事業の厚みを増している。(西部・三苫能徳)

九州電力が開発した森林分析システムは、人工衛星で撮影した森林の画像から樹木の本数や幹の太さをAIで推定し、指定範囲内の木材の量「材積量」を割り出す。

AIが判断するのは「樹冠」と呼ばれる、樹木の枝葉が広がった部分の大きさ。樹木を上部から見ると、枝が広がるほど樹冠の直径は大きくなる。樹木は枝葉の広がりにつれて高さが伸び、幹も太くなる相関性から、木材のボリュームを導き出す仕組みだ。

AIは画像から樹木を検出し、本数とサイズを算出する。樹高などの推計では誤差1%ほどと高精度で、材積量の解析精度も9割ほどを実現した。

従来、材積量の算出では現地で全数を調査したり、サンプルとなる数値をいくつか取って推計したりする方法もある。他方で斜面などで足場が悪く、測量には人手がかかる。現地まで行くことが容易でない場合もある。

開発したシステムは、画像上の範囲を指定するだけで材積量を把握できる。調査範囲が50万平方メートル以上の場合で全樹木を計る方式よりコスト効果が上回り、500万平方メートルでは現地計測を基にした既存の推計法も上回る。

そのため森林由来のカーボンクレジットを算出する際にもコストと人手を大きく抑えられると見る。

システムは衛星画像を利用する新規事業の一環で開発に着手した。経済産業省「衛星データ利用促進のための地域実証事業」に採択され、開発を進めた。

開発にあたり、AI解析との“答え合わせ”は、九電が大分県に擁する社有林で調査。森林管理を担うグループの九州林産(福岡市南区)と連携した。

システムは基礎技術としての開発を完了しており、九電としては精度向上に向けた開発継続を予定している。

空に関連した九電の事業では九電ドローンサービス(同中央区)が事業の厚みを増している。2019年にドローンによる測量や撮影を事業化し、24年4月に九電社員が兼務する形で、子会社として独立させて機動力を高めた。

  • 九電が保有する四足歩行ロボット「Spot」。ドローンとの組み合わせで相乗効果を目指す

140台以上のドローンを保有し、地域に根差す活動を目指して用途や地域特性に合わせた機材をそろえる。機体は大型機や垂直離着陸(VTOL)固定翼機、水中ドローンなど多様だ。組み合わせるマルチスペクトラムカメラや高性能センサー「LiDAR」といった機器も擁する。さらに制御システムの開発なども手がける。

このほか米ボストン・ダイナミクス製の四足歩行ロボット「Spot(スポット)」も導入。空と陸との協調で事業フィールドをさらに広げていく。

(2024/11/25 05:00)

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