(2024/11/28 05:00)
少数与党の石破茂政権は、国民民主党との合意がなければ2025年度税制改正をまとめられない。ただ国民民主党の要求に“満額回答”すれば「年収103万円の壁」や「ガソリン減税」で税収が大幅に減る。中でも石破政権が重視する地方の財政への影響が懸念される。ガソリン減税は脱炭素化に逆行する負の側面もある。妥当な減税なのか、慎重な議論を求めたい。
国民民主は物価高対策の一つにガソリン減税を掲げる。石破政権は同党の意向を受け、総合経済対策に「(ガソリン税は)自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」と応じている。政権が何らかの結論を出さなければ、25年度税制改正の策定が危ぶまれる。
現在、ガソリン税は1リットル当たり53・8円が課され、このうち25・1円が暫定税率として「上乗せ」されている。上乗せ分はもともと道路特定財源で、09年に一般財源化された。暫定税率としながら現在も適用されている。国民民主はこの上乗せ分の廃止や、上乗せ分をガソリン高騰時に免除するトリガー条項の発動などを与党に求めている。
ガソリン税は揮発油税(国税)と地方揮発油税(地方税)から成り、上乗せ分の廃止となれば国・地方で1・5兆円もの税収減となる。トリガー条項発動も、政府の価格介入で市場機能を歪めるほか、発動までの買い控え・発動後の駆け込み需要など現場も混乱する。ガソリン価格の抑制自体が脱炭素の流れに逆行する。ガソリン減税をめぐっては多くの懸念を拭えない。
暫定税率の廃止もトリガー条項の発動も、富裕層にも恩恵が及ぶ。低所得者に対象を絞るなど財政規律にも配慮したい。
他方、ガソリン税にはそもそも制度上の問題があり、見直し自体は必要だ。ガソリン税を課しているガソリン価格には、その上に消費税も課されており、二重課税の問題が指摘される。国民民主はこの二重課税の廃止も求めており、理にかなった主張は優先して議論を深めたい。
ガソリン価格は円安にも左右される。石破政権は日銀とも連携し物価安定を図ってほしい。
(2024/11/28 05:00)
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