(2024/11/29 12:00)
山崎豊子氏の著書を読むきっかけとなったのは、台湾で会社を経営していた知人からの薦めだった。間が空くと読んでいる途中で飽きてしまうので、「読み出すとのめり込んでいくような小説でないとだめだ」と知人に言われ、山崎氏の作品を教えられた。
山崎氏はいろいろな小説を書いており、それぞれがまったく異なる物語であることが魅力の一つだ。『不毛地帯』の主人公はシベリア抑留を経験し、帰国してからは商社に入る。そして、退職後は戦友の墓参りのために再びシベリアへ向かう。希望が見える終わり方を描いている。
一方、『二つの祖国』は悲劇的な終わりを迎える。同著は最初から最後まで面白く、文庫本で4冊分の内容を1週間で一気に読み切ってしまった。太平洋戦争時の日系米国人である主人公が、恋人を白血病で亡くす。また、東京裁判にも立ち会い、自分が日本人なのか米国人なのかを思い悩み、自ら命を絶ってしまう。
山崎氏はこうした多様な物語を描いている作家だが、それらに共通しているのは人間への洞察力の深さだ。人間関係の良い面も醜い面も描き出している。典型は『華麗なる一族』で、銀行家の一族の間の人間関係の裏表を書いている。
執筆に当たって多くの人に取材しているそうで、「こういう場面で人間はこのようにものを考える」といった洞察が、取材の中で可能になったのではないかと感じる。人間の奥深い感情をこれだけの文章にできることに感心しきりだ。
時代小説も読む。例えば、池波正太郎著『雲霧仁左衛門』は江戸時代の大泥棒である主人公と、取り締まる側の知恵比べがとても面白い。主人公は部下の役割分担をよく考え、思いもよらない方法を実行する。その発想力に驚かされ、読むたびに引き込まれる。
こうした本を読み終えると、「こういう時代もあったのか」と、かつての時代への思いをはせ、気持ちがほぐれる。
(2024/11/29 12:00)
総合1のニュース一覧
- 石破首相、所信表明 安全保障など重要政策推進(24/11/29)
- パワー半導体安定供給 デンソー・富士電機、協業し生産体制強化(24/11/29)
- 10月の鉱工業生産3.0%上昇、基調判断「一進一退で推移」(24/11/29)
- 東北大学・アイシン、省電力のエッジ向けAI半導体 起動時間も短縮(24/11/29)
- ボールウェーブ、クロマトグラフィーを超小型化 有人宇宙探査で実用化(24/11/29)
- 「読書で人への洞察力学ぶ」 菊田鉄工会長・菊田惇氏(24/11/29)
- 電子部品大手5社の4―9月期、営業益17%増 スマホ・DCけん引(24/11/29)
- スペースワン、和歌山・串本町に射点増設 30年代、年30回衛星輸送(24/11/29)
- 広角/富士通会長・古田英範(下)IT・博士人材不足に危機感(24/11/29)
- アピックヤマダが封止装置 多様な半導体に対応(24/11/29)
- 産業春秋/トランプ氏「『関税』は美しい」(24/11/29)
- おことわり/「再興 素形材 稼ぐ力を取り戻せ」は休みました(24/11/29)