福岡市、衛星を活用し漏水調査 IoTセンサーで早期判定

(2024/12/23 12:00)

福岡市は一滴の水もムダにしない―。福岡市の水道管などからの漏水率は、2022年度1・8%。市は世界トップクラスの低い漏水率を維持し、水を有効利用するために「節水型都市づくり」に取り組む。水源開発や節水とともに水道に関する技術の実用を進める。24年10月には人工知能(AI)を搭載したIoT(モノのインターネット)センサーシステムと人工衛星を活用し、水道管漏水調査のアップデートに乗り出した。

人口160万人を超える福岡市は全国の政令市で唯一、水源となる1級河川を持たない。1978年には未曽有の大渇水に見舞われ、287日間に及ぶ給水制限を実施した。その経験から市は水源開発や節水意識の向上を進めてきた。

計画的な水道管の更新や配水調整システムによる24時間水圧調整、調査員による漏水調査なども実施する。2024年はスタートアップなどを支援する市の事業「先端技術公共調達サポート」を活用し、低い漏水率の維持に2段階で取り組み始めた。

第1段階は5月、人工衛星画像を活用したスクリーニングによる漏水調査を実施。湿った地表は乾いた地表と比べて反射が強いというマイクロ波の特徴を利用する。昼夜天候を問わず運用できる宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星「だいち2号」の合成開口レーダーで市内全域をデータ解析してスクリーニング。水道管の環境情報も生かして漏水の可能性が高いエリアを特定する。人工衛星による画像解析はリモート・センシング技術センター(東京都港区)が行う。漏水リスクがあるエリアを直径50メートルまで絞り込む。

10月に導入した第2段階は、漏水箇所の特定に近づく詳細調査だ。抽出された

  • 漏水箇所特定に近づくために水道管に設置するIoTセンサー

漏水リスクエリアの中で、人工衛星により漏水可能性があるとされた管路や鉄軌道、主要国道の下に埋設された水道管などに、AI判定機能を備えたIoTセンサーを設置。漏水の音を検知して漏水箇所を早期に判定する。漏水の可能性があると市水道局に自動通信され、現場対応につなぐ。

機器の設置はフジテコム(同千代田区)九州支店が実施。データ解析はゼロサポート(同中央区)福岡支店が行う。AIは漏水の音と側溝を流れる水の音などの環境音を区別する学習も行った。同センサーは10月までに市内50カ所に設置したという。

市は「従来の方法と新技術を組み合わせて水を大切にする取り組みを今後も続ける」(水道局)としている。

(2024/12/23 12:00)

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