[ オピニオン ]
(2015/11/25 05:00)
モノづくりとITの融合による新たな産業革命の実現に向け、日本の産業界は企業の壁を越えた製造現場の連携手法を早期に確立してほしい。ドイツが国家プロジェクトで「インダストリー4・0」を手がける一方、米国ではゼネラル・エレクトリック(GE)など大手企業が「インダストリアル・インターネット」を提唱する。
こうした動きを、国家間の主導権争いと見なすと対応を誤るおそれがある。各国の取り組みが合わさっていずれ大きな流れになることを見越し、日本企業がやりやすい方法で国内外を問わず連携できる仕組みを用意しておきたい。
グローバル展開する巨大企業は国や地域にこだわっていない。インダストリー4・0の中心企業と目される独シーメンスなどは、今年初めにインダストリアル・インターネットのコンソーシアムに参加し、ワーキンググループで積極的に活動している。
日本政府の肝いりで5月に発足した「ロボット革命イニシアティブ協議会」にも米インテル、GE、独SAPやシーメンスなどが会員に加わった。製造業で強さを発揮するドイツとITで世界をリードする米国が得意分野を持ち寄り、モノづくり大国・日本の強みを取り込む狙いがありそうだ。
日本で6月に発足した「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」は、他社に知られたくないノウハウや技術と協調したい領域を切り分け、企業間のデータ連携を可能にする”ゆるやかな標準化“の実現を目指す。最低限共通化すべき部分のみ規定し、つながろうとする企業同士の個別変更や部分改良を認める。すり合わせ型のモノづくりを得意とする日本企業に適するやり方だろう。IVIは近く10件の実証実験をスタートする。成果は一般公開し、利用を促す方針だ。
ドイツや米国の新産業革命が接近しつつある中で、ゆるやかな標準化のような日本発で実現性の高い手法を確立し、いち早く提案することは大きな意味を持つ。日本のモノづくり企業は流れに巻き込まれるのではなく、自ら流れをつくってもらいたい。
(2015/11/25 05:00)
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