[ オピニオン ]
(2016/1/1 05:00)
年が改まるたびに、時代の変化速度が増していることを感じる。国内の政局や国際関係はめまぐるしく変化し、企業業績も驚くほど短期間で上下する。産業の基盤となるモノづくりの技術もまた、この例外ではない。
日本の産業界は1980年代に世界の頂点に達した。その後も技術の改善を重ね、現在も多くの産業分野で優れた国際競争力を維持しているというのが産業界の一般的な考えだ。その認識に死角はないだろうか。
情報革命が生産技術に及んでいる。モノのインターネット(IoT)をベースとした米国のインダストリアルインターネット構想やドイツのインダストリー4・0には、日本からも高い関心が寄せられている。特に米独が連携し、規格化で先行しようという動きは見すごせないはずだ。
しかし残念ながら、経営者レベルでは「まだ形になったものではない」「日本の生産技術の方が優れている」など、米独の動きに懐疑的な声が聞かれることが少なくない。警戒感はあっても危機感は乏しいのが現状ではないか。
日本のモノづくり技術は個々の工程に優れた技術者を配し、生産ライン全体を最適化することで効率を高める手法をとってきた。そこで獲得した優位性がIoTによって一気に覆されるかどうか、確かに不透明な部分はある。
だからといって、IoTによるモノづくり革命の規格づくりから日本が脱落することはあってはならない。情報技術の知識と英語による議論の中に入っていくことは日本の大手企業にとっても容易ではないだろう。産業界はこれまで以上に真剣に、この新たな技術革新に向き合う必要がある。
幸い、国内でも政府主導の「IoT推進コンソーシアム」や民間主導の「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」など、いくつかの新たな試みが始まっている。この動きを加速することが2016年の産業界の最大の課題であろう。「日本のモノづくりは優位にある」という認識が、変革を妨げる死角となってはならない。
(2016/1/1 05:00)
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