[ その他 ]
(2016/1/28 05:00)
極寒の惑星に閉じ込められた政治犯が、自由を求めて旅立つ。知識はあっても資源のない彼らが脱出用宇宙船の駆体にしたのは、無尽蔵にあるドライアイスだった。田中芳樹氏の長編SF小説『銀河英雄伝説』の一挿話である。この話の魅力は「モノは使いよう」ということだろう。なるほど絶対零度に近い宇宙空間ならドライアイスは溶け出さず、構造材になり得るかもしれない。
三菱電機が世界で初めて、海水の水柱を使うアンテナ技術を開発した。海水の導電性は常識だが、それを噴水にし、さらに噴出口から海中への電気の流れを遮断することで実用性を確認した。
試作は高さ30センチメートル程度のUHFアンテナだが、大規模な噴水を使えば短波や中波の送受信も可能だろう。銅やアルミと違って海水は事実上、無尽蔵で入手しやすい。事故で無人島に漂着したら、海水を溝に引き込んでSOSを発信できないか。
もちろん具体的な製品ではなく、技術発表にすぎない。ただデジタルに傾斜した電気通信の世界で、日本のアナログ技術の強さを再確認した。塩分によるさびの発生とか、そもそも噴出に使うエネルギーとか、前途の課題を論ずるのは野暮(やぼ)というものであろう。技術って、実に面白い。
(2016/1/28 05:00)