[ その他 ]
(2016/2/17 05:00)
もう十数年も前、たまたま視聴した米国のインタビュー番組で、生前のジャック・レモンがこんな自己紹介でスタジオをドッとわかせていた。「ジョン、お前はレモンだ」▼ビリー・ワイルダー監督の映画『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』などで知られる往年の名優。さえない男を味わい深く演じた。だからこそ、本名のジョン・U・レモンをもじったシャレの面白みが増したのだろう。英語のレモンには欠陥品という意味がある▼これは経済の用語でもある。優良品と不良品を区別する情報を売り手が独占していると、買い手は低品質の財を高く売りつけられることを警戒して安い財ばかり求める。結果として低品質の商品ばかりになってしまう。これを「レモン市場」という。つまり悪貨が良貨を駆逐する▼そんなレモンが最近、世の中にあふれている。処理業者による廃棄食品の横流しは、発覚から1カ月を過ぎても、まだ余波がおさまらない。何を口にしても「ひょっとして…」と不安がよぎる▼買い手が信頼できる市場がなければ、経済活動は拡大しない。欠陥品の横行は、日本の景気回復の腰を折りかねない。レモンは、名作コメディーとともに語られる存在であってほしい。
(2016/2/17 05:00)