[ オピニオン ]
(2016/2/17 05:00)
中国人を中心としたインバウンド(訪日外国人)の、いわゆる”爆買い“に変調がみられ始めた。大手百貨店などは2015年に、この爆買いの恩恵で売り上げを伸ばしたところが多い。しかし人民元安が進んだことや再訪日客(リピーター)が増えたことで、免税売り上げの基調に変化が出ている。今後、インバウンドは人数としては増加しても、購入額が同じペースで伸びるとは考えにくい。新たな消費動向をとらえた商品政策や販売方法への転換が必要な局面に入ってきた。
インバウンド消費のけん引役は中国本土を含めた中華圏だ。最近の中国の経済減速の影響は、すでに訪日客の数に表れている。
政府観光局によると15年の中国からの訪日客は全体の4分の1にあたる約499万人と、14年比でほぼ倍増した。1―6月は前年同月に比べ2倍を上回る月が多かったが、下期以降、9、10月はともに99・6%増、11月は74・9%増、12月は82・7%増と、伸び率の鈍化が分かる。16年1月はやや回復したが、勢いは弱い。
百貨店の免税売上高にも、同じ鈍化傾向が見られる。ピークだった15年6月には、前年同月比4倍など驚異的な伸びを示していた。これが月を追うごとに縮小し、10月には同2倍になった。
逆に、免税対応に力を入れているドラッグストアなどは15年下期の業績が大きく伸びるという傾向も出ている。これまで百貨店などで土産物の購入や自家消費の買いだめをしていた中国人観光客が、低価格品を探して”買い場“が分散している可能性がある。人民元安で購買力に陰りが出始めたのに加えてリピーターが増えたため、一段と安く買えるチャネルに消費が流れ始めたとも考えられる。
こうなると、15年までと同じ商品政策や販売方法では中華圏からの訪日客に対応できなくなってしまう。インバウンドのショッピング需要は今後も続くだろう。しかし15年のような熱狂が冷めて”爆“がとれた通常の買い物になる。改めて市場戦略を練り直し、鈍化してきた消費に応じた商品と販売手法が必要だ。
(2016/2/17 05:00)