[ オピニオン ]
(2016/2/18 05:00)
造船・重機大手の業績が異変を来している。2015年4―12月期に三菱重工業や川崎重工業、IHI、三井造船などが軒並み特別損失を計上し、通期見通しの下方修正を余儀なくされた。原油価格下落やブラジル経済低迷による船舶海洋事業の不振など外的要因だけでなく、実力過信による見通しの甘さがみえる。各社とも業務プロセスの総点検が必要だ。
最も深刻なのが、7年ぶりに当期赤字に転落するIHI。期初には490億円の当期黒字を見込んでいたが、3度の下方修正で300億円の赤字見込みとなり、期末配当見送りを決めた。理由の一つは生産混乱を引き起こした愛知工場(愛知県知多市)の海洋構造物について、受注時点で難度を見極められなかったことにある。
こうした“目利き力”の低下は累計1800億円超の損失計上に至った三菱重工の客船事業や、三井造船子会社の新潟造船(新潟市中央区)で発生した海洋支援船の工程混乱にも共通する課題だ。
陸上工事にも不安がある。三菱重工は関西電力姫路第2火力発電所(兵庫県姫路市)の蒸気タービン不具合に関する対策費用が膨らんだ。IHIはインドネシアのボイラ製造子会社で、溶接材料を取り違えるという「モノづくり企業として誠に恥ずかしい事態」(斎藤保社長)を起こした。
造船を祖業とする各社は、船舶に準ずる大型工事の経験が豊富にある。こうした大型工事を納期通り、優れた品質で完成するEPC(設計・調達・建設)力が、わが国造船・重機メーカーの強みだったはずだ。
現状は、受注前審査や契約形態を含めた詳細分析をおろそかにしたと批判されても仕方ない。機電融合で技術が複雑化し、同時にプロジェクトが高度・大型化する中で、従来の経験だけでは十分に対処できなくなりつつある。
三菱重工は客船事業の反省を生かし、トップ直轄の新たなリスク管理体制を導入する。他の各社も大きな損失を計上した今こそ、古い企業体質を変革する好機だ。総合力を最大限に引き出すことで、勝機を見いだしてほしい。
(2016/2/18 05:00)
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