[ オピニオン ]
(2016/2/22 05:00)
経済産業省は、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などを活用した「スマート工場」の実証試験を2016年に実施するという。工場にセンサーを張り巡らして機械の稼働状況や故障予知などの情報を集め、AIで解析する。生産効率向上、現場の改善といった生産技術者の仕事を肩代わりさせる実験だろう。
中小製造業を中心に、60歳定年後もがんばってきた団塊世代の熟練の技術者や技能者がまだたくさんいる。しかし、それも70歳になるとリタイアが避けられなくなる”17年問題“が間近に迫っている。スマート工場は、この問題の解決の一助になる。中小が導入しやすいものにしてほしい。
だが、これが日本のモノづくりの競争力の特効薬になるかどうかは疑問である。情報技術はあっと言う間に広がる。世界中が同じようなスマート工場になった時、どこで差別化するのか。それは、やはり技術者の知恵と作業者の技能である。
日本のモノづくり力は、小集団活動や改善提案など現場の一人一人がどうやれば品質が向上できるか真剣に考えるボトムアップにより培われてきた。工作機械のボタンを押したら材料がセットされて部品が出てくるターンキーシステムを導入しても、工場によって精度などに差が出たという。
技術者と技能者がしっかりしている工場では、個別のワークに対して個別の生産技術的な改善がある。それを絶えず入れ込める工場であれば毎年、改善を繰り返せるわけだ。
砥粒(とりゅう)加工学会の田島琢二学会長(マルトー社長)は「自動化し、センサーで情報を集めるスマート工場で、ある一定の生産効率を上げるシステムをつくり上げても、それを管理運用し進化させるのは人間だ」という。スマート工場だからこそ、学習機能をもった人間の力が差別化の最大の要因になることは疑いない。
知識と技能が交わって、はじめて差別化が可能になる。IoT時代のモノづくりは、いままで以上の技術者、技能者を育てていかなければ進化しない。
(2016/2/22 05:00)
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