[ オピニオン ]
(2016/6/3 05:00)
景気の停滞が明らかになったが、足元の製造業の採用意欲は依然として衰えていない。製造現場の人手不足が慢性化しており、このままでは技能伝承もままならないと危惧する声が多い。大手が採用枠を拡大する中で、中堅・中小製造業の人材確保は困難さを増している。
トヨタ自動車が多くの工場を置く愛知県は、人手不足が特に顕著だ。堅調な自動車生産を反映して有効求人倍率の改善が続いている。2015年度の愛知県の有効求人倍率は1・56倍と前年比0・03ポイント向上。6年連続で改善した。愛知労働局は今後も「緩やかな改善が続く」との判断だ。
人手不足感は技能職で特に強い。トヨタとグループの大手部品メーカーは技術・技能職種の採用拡大に意欲的。期間従業員の正社員登用も増やす姿勢だ。
大手が採用枠を拡大する中で割を食っているのが中堅・中小企業。募集をかけても応募者の少なさを嘆く経営者が多い。週休3日制の導入など、人材確保に向けて思い切った施策を打ち出すケースまで散見する。
雇用条件の改善も確かに重要だが、中小企業には採用に対する意識改革を求めたい。特に独創的な技術・サービスを持ち味とする中小は、これまでの事業展開で培った小回りの利く取り組みを採用面でも、ぜひ発揮してほしい。
例えば地元の商工会議所などが主催する就職相談会に出展したり、大学との共同研究に取り組んだりして地域に自らの存在をアピールする手法は比較的、取り組みやすいだろう。
雇用形態にも柔軟性を取り入れたい。当初はアルバイトで採用し、入社後の成長のレベルによって正社員に登用する制度を設ければモチベーション維持にもつながる。ワークライフバランス(仕事との生活の調和)を重視する若手求職者にとって、企業規模よりも“やりがい”を感じることのほうが就業意欲が高まるともいわれる。
企業にとって採用は常に真剣勝負だが、時代に合わせた変化も必要だ。中小企業には独創性を取り入れる工夫がほしい。
(2016/6/3 05:00)
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