[ オピニオン ]
(2016/6/14 05:00)
医療分野のICT化の議論が盛んだ。患者の診療情報などは現状、診察した医療機関が個別に管理しており、連携に乏しい。情報をつなぎ、活用することで医療の質の向上や医療費削減だけでなく、膨大なデータを生かした日本発の創薬・医療機器開発なども期待できる。ただ医療情報は個人にひもづく重要情報だけに保護と利活用の両立が求められる。慎重かつ前向きな発想で取り組むべきだ。
政府は、2日に閣議決定した『日本再興戦略2016』に「世界に冠たる医療ICT活用基盤の構築」を掲げた。「治療や検査等の膨大なデータを、安全かつ効果的に活用することにより、最先端の創薬や治療、医療機器の研究開発につなげていくことができる」としている。
官民あげた具体化の検討も進んでいる。日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP、森田朗理事長=国立社会保障・人口問題研究所所長)は、医療情報化を推進するための三つの解決策として「将来を見据えた医療分野における個人情報保護のありかたを解決」「診療情報データベースの利活用推進に向けた取り組みの強化」「医療等IDを使った医療や健康情報の連接による利活用の推進」を提言している。
個人情報保護のあり方では、過剰に萎縮しないための「社会的な合意形成」を前提に「法的整備」の必要性を指摘する。また利活用の促進には医療等IDによる連携を前提に、データ形式の標準化やデータベースの有用性の検証を訴えている。
政府はマイナンバー(税と社会保障番号)の利活用の候補として医療分野をあげている。ただ個人情報に直結するため、患者や医師らの拒否反応も予想される。一方で医療情報の活用は、将来の医療に役立つという公共性がある点も忘れるべきでない。過度に制限するのではなく、いかに適切に情報を利活用するかという視点で考えることが重要だろう。
安心・安全は大前提だ。その上で医療情報の利活用が、個人や医療現場にもたらす価値を丁寧に伝える努力も欠かせない。
(2016/6/14 05:00)
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