[ オピニオン ]
(2016/6/20 05:00)
改正酒税法と関連法案が、先の通常国会で成立した。酒類の過度な安売り防止が目的で、2017年にも施行する。小売りの法規制は難しい問題だが、デフレ脱却が進まず、流通大手が安売り競争に疲弊している現状では、他の分野でもこうした施策を検討すべきではないか。
改正法は酒類の取引基準を作成し、これに従わない量販店などの業者は免許の取り消しもできるという厳しい内容だ。大義名分は小売店の保護だが、業界の見方は異なる。酒類の市場は伸びず、メーカーも卸も利益確保が不透明な状況が続く。こうした中で、ビールの価格下落に一定の防波堤を築きたいという業界の意向が、国による規制強化の受け入れにまとまった。
この問題は「価格は誰が決めるのか」という古くて新しい問題を、メーカーと流通それぞれに突きつけたといえる。免許制の残る酒類だから法で規制しやすい。しかしかつては、他の分野でも市場や価格形成が行政の監督下に置かれていた。
その最たるものが大規模小売店舗法だ。事前調整などの大型店の出店規制は地域の中小店舗を守る役割もあったが、大型店側も一度、出店の権利を得れば競合店の出現におびえにくくなる。結果として無理な安売りに走る必要もなかった。
その大店法が外圧によって廃され、自由に出店できるようになった。すると大型店同士の競争が激化し、競争力を喪失した大手量販チェーンの多くが再編を余儀なくされた。
確かに安売りは消費者の利益になる。競争は当然であり、出店規制で保護された流通業はダメだという見方もあるだろう。
しかし今日の流通の最前線では家電や食品、日用品が常に特売の目玉となり、原価割れを疑われる商品も多い。こうした過当競争が、デフレ脱却の障害のひとつになっている。
産業界は基本的に“市場統制”を望まないが、規制で過度な安売りに歯止めをかけるべきだという声が流通の一部から出ていることは見過ごせない。荒唐無稽と切り捨てず、一考を要する問題ではないか。
(2016/6/20 05:00)
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