[ オピニオン ]
(2016/6/24 05:00)
内閣府が先に発表した「『防災4・0』未来構想プロジェクト」は、有識者委員が気候変動に伴う災害の激甚化への対応を提言したものだ。2014年の広島土砂災害、15年の関東・東北豪雨など、近年の集中豪雨は大きな被害を生んでいる。これが地球温暖化の結果かどうかは定かではないものの、気候変動リスクが高まる中で警鐘を鳴らしたことを評価したい。
提言では、日本の防災対策の転換点となった過去3回の大災害、すなわち1959年の伊勢湾台風、95年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災とその対策を「防災1・0」「同2・0」「同3・0」と定義した。これに対し「同4・0」は、気候変動に伴う災害の激甚化に「備える」意味がある。
最大のポイントは、想定できる最大規模の災害に対して行政が最善策を尽くすことを前提にしながらも「公助」に限界があると認めたことだ。国民や企業が災害リスクに主体的に向き合う必要があるとして、相互のつながりやネットワークを再構築し、社会全体の復元力を高める姿を理想に掲げる。
ただ個別の備えに対する提言は必ずしも十分とはいえない。例えば企業に対しては、災害リスクに対する意識の醸成と事業継続計画(BCP)を求めた。しかしBCPの必要性は過去の災害で認知されており、意識の高い企業は策定を終えている。
本質的な問題は、いまだにBCPを策定しない企業の意識をどう変えるかだろう。内閣府の調査ではBCP策定率は大企業で約6割、中堅企業で約3割にとどまる。この割合を上げるための具体策がほしい。
金融的手法を活用した災害リスクへの備えについても具体例が乏しかった。ただ内閣府はこの問題の検討会を設置する方針を示しており、今後の議論に期待がかかる。
防災の難しさは、重要性を分かっていても具体的な行動に結びつけにくいことだ。地震や火災に比べて被害が想像しにくい温暖化問題では、その傾向が強まる。官民ともに主体的に取り組む意識を醸成したい。
(2016/6/24 05:00)
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