[ オピニオン ]
(2016/7/1 05:00)
企業の景況感が冷え込んでいる。英国が欧州連合(EU)離脱を選択したことで世界経済の不透明感が増して不安感がまん延しているため、景況感は今後さらに下振れすることが懸念される。企業は英国進出のいかんを問わず、経営戦略の練り直しを迫られそうだ。
日銀が1日に発表する6月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感は前回3月調査に続いて悪化する見通し。円高・株安の継続や実質賃金の伸び悩みで消費低迷が続くことに加え、新興国経済の減速や熊本地震で経済活動が停滞したことが背景にある。
比較的高水準で推移してきた大企業非製造業の景況感も悪化が予想される。個人消費が伸び悩んでいるほか、中国当局の関税引き上げで中国人観光客の爆買いが減速し、小売売上高が低迷している。短観結果を受けて日銀が追加緩和に踏み切る下地は整うが、金融政策だけで景況感を上向かせるのは困難なため日銀の出方が注目される。
政府・日銀は英国の国民投票結果の判明後、直ちに緊急会合を開き、金融市場の混乱を早期に収束させるために各国と協調して機動的に必要な措置を講じることを決めた。円高・株安が長期化した場合には、今秋の経済対策を10兆円超規模に拡大する。政府がこうした姿勢を示したことで、先週末に動揺した国内の金融市場は落ち着きを取り戻した。ただ英国や米国の市場には不透明感が残っていることから、予断は許されない。
英国に進出した日系企業は、EUが英国製品に対する関税を復活させることに強い危機感を抱いている。生産拠点の欧州本土への移転を検討し始めた企業もある。また産業界は英国問題が日EU間の経済連携協定(EPA)交渉に支障を来さないよう要望しており、政府の適切な対応が求められる。
英国のEU離脱というリスクの計り知れない事態に直面し、各国は対応に苦慮している。日本政府は政策を総動員し、金融市場と産業界の不安を解消してもらいたい。秋に予定する経済対策も前倒しが望ましい。
(2016/7/1 05:00)
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