[ オピニオン ]
(2016/7/18 05:00)
政府・与党は大型補正予算によって、経済政策「アベノミクス」を強化する方針を打ち出している。だが、もともと中小製造業は大企業の海外生産拡大もあり、リーマン・ショック以降の受注減から抜け出せず、事業所数は減少が続いている。
こうした中小の生き残り策として「リノベーション」を提唱する報告書を機械振興協会経済研究所がまとめた。老朽化した建物を新築状態に戻すことをリノベーションと呼ぶが、報告書では「中小企業が自社の中核資源や外部資源を活用し新事業展開につなげる行動」とした。
それによるとリノベーションは、まず自社の中核資源を再認識し、次に顧客や社会の動向を把握して技能活用戦略を立案する。必要なら外部資源と連携し、技能を生かしたモノづくりに取り組むという手順で進める。さらに「開放特許活用型」「デザイン活用型」「女性力活用型」の3タイプに分けて成功事例を示した。
開放特許活用型は、大企業の膨大な未利用特許権を活用して新事業創出につなげる。川崎市が初めて本格的に取り組んだことから「川崎モデル」と呼ばれる。大企業と大学が共同開発したチタンアパタイトの特許をもとに、中小企業が抗菌塗料を開発した事例を紹介した。
デザイン活用型では、長野県の中小金型メーカーがキャラクターなどのフィギュア(人形)と生活用品を手掛け、事業を3本柱に育てた例がある。また川崎市のヘラ絞りの受注会社が新潟市の中小企業と組み、漆をコーティングしたビアタンブラーを製品化。売上高の15%を占めるまでに成長させた。さらに女性力活用型では、生産年齢人口の減少対策として“リケジョ(理系女子)”採用で成功した全国の事例を紹介している。
こうしたモノづくりリノベーションは、潜在的な市場を顕在化する手段だ。意識すれば自社の技能、あるいは外部資源との連携による補完で、新しい価値を創造できるのではないだろうか。大企業という既存市場に過度に依存しない経営戦略構築のヒントになるかもしれない。
(2016/7/18 05:00)
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