[ オピニオン ]
(2016/8/12 05:00)
日本のモノづくりを下支えしてきた中小製造業の減少が止まらない。中小企業庁によると、1986年に全国で約87万あった事業所は、2006年に約55万まで急減した。その後も下落は続いており、12年は約49万に減っている。
中小製造業の集積地として知られる東京都大田区の場合、1983年の約9200をピークに2003年に半減。14年は3400事業所と、ピークの3分の1近くになった。
こうした中で大田区では、中小製造業が自ら生き残りを図ろうと10年ほど前に医療機器の研究会を立ち上げた。高齢化で需要が見込めることや大半が輸入品に頼っているため、日本人に合った機器が必要と考えた。
当初は医師に「お困りのことはありませんか」と声をかけ、リハビリを手助けする機器などの製作を始めた。ただ個別の医師との連携だけで広く医療現場に普及させるのは難しい。そこで大田区と大田区産業振興協会が12年に「医工連携支援センター」を設置。区内に病院がある東邦大学と東京労災病院などと連携し、本格的に医療機器開発に乗り出した。医療機器の販売会社が集積する文京区ともパートナーシップを結んだ。
その結果、樹脂会社が骨や臓器の形状を3Dプリンターで正確に再現したり、ワイヤメーカーによる医療用鋸線、パイプメーカーによる耳鼻咽喉科向けの吸引管などの開発事例が出ている。大田区産業振興協会によると、現在、進行中の連携案件は130件程度あるそうだ。大田区の新製品・新技術開発支援助成金の申請のうち医療機器は14年度4件、15年度5件だったが、16年度は10件に増えた。
大田区に限らず、経済環境の変化に強い中小企業は、設計開発能力や高度の基盤技術・技能をヘルスケアや環境・エネルギー、ロボティクス、航空宇宙など成長が見込まれる分野に応用しているケースが多い。1社で難しけれぱ仲間の企業と連携する手もある。中小製造業の減少を放置すれば、日本の製造業の凋落(ちょうらく)につながりかねない。官民で知恵を絞りたい。
(2016/8/12 05:00)
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