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[ 科学技術・大学 ]
(2016/8/29 05:00)
IoT(モノのインターネット)時代に向けて、日本発の国際無線通信規格(Wi―SUN、ワイサン)の活用が広がり始めた。同規格に対応した無線機は、単3乾電池3個程度の消費電力で約10年間動作する省電力が特徴。地震などの災害時に現場の映像を遠隔地に送る技術や、高齢者の見守りシステムなどに応用が進む。
(藤木信穂)
【長い波長】
Wi―SUNは、ワイヤレス・スマートユーティリティー・ネットワークの略。情報通信研究機構が開発を主導し、米電気電子学会(IEEE)に認定された国際標準規格。国内では920メガヘルツ帯(メガは100万)の周波数を使う。
電池駆動を想定した省電力な通信方式で、機器間の相互接続性が高い。無線LANやブルートゥース・ロー・エナジーよりも波長の長い電波を使うため、建物などで遮蔽(しゃへい)された場所でも電波を検知できる。バケツリレーのようにデータを送る(マルチホップ通信)機能を持っており、不感地帯があってもエリアを確保しやすい。
【常時監視】
近年では、東京電力がスマートメーター(通信機能付き電力量計)の規格に採用したほか、情通機構が開発したWi―SUN無線機は東日本大震災後、福島県の放射線量の無人測定に使われた。
情通機構は京都大学の原田博司教授と共同で、崖崩れや地震が発生した場合に、現場周辺の映像を遠隔地に自動で送る技術を開発した。広域無線網(WRAN)とWi―SUNを統合したシステムを構築。遠隔地のセンサーデータを常時監視すれば、自治体などが災害時に現場の映像を即時に確認できる。
【高齢者見守り】
内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一つである「超ビッグデータプラットフォーム」研究計画の中でも、この統合システムを活用。医療と工場(モノづくり)を支援する基盤を作る方針だ。
NTT東日本は情通機構と共同で、Wi―SUNを使った高齢者の見守りシステムを開発した。実際に、認知症の高齢者が徘徊(はいかい)した場合を想定した捜索模擬訓練で、その有用性を確認した。このほか、農業や漁業分野でもWi―SUNの活用が進んでいる。
(2016/8/29 05:00)
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