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[ 科学技術・大学 ]
(2016/9/9 05:00)
九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授らは、自閉症の中でも高い確率で起きる「CHD8」と呼ばれる遺伝子の変異により同症が発症する仕組みを解明した。同遺伝子の変異を持つマウスの脳を観察。遺伝子変異により同遺伝子が作るたんぱく質の量が減少すると、「REST」と呼ばれる別のたんぱく質が異常に活性化し、神経の発達が遅れることが分かった。
薬剤の投与によりCHD8の量を増やしたり、RESTの活性化を抑えたりして、自閉症を治療する手法の開発につながる可能性がある。
成果は8日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
CHD8は細胞の核の中にある染色体の構造を変化させ、さまざまな遺伝子の発現量を調節する機能を持つ。ヒトの自閉症患者の場合、父方由来のCHD8遺伝子か、母方由来のCHD8遺伝子のどちらか一つを欠損している「半欠損」であることが多い。
研究チームは同遺伝子を人工的に半欠損させたマウスを作製。同マウスの行動を観察したところ、不安の増加やコミュニケーション異常などヒトの自閉症と似た症状が現れた。同マウスの脳を詳しく解析した結果、RESTの活性度が異常に上昇していた。
中山主幹教授は「神経細胞の基となる神経幹細胞や神経前駆細胞が分化する過程で、CHD8はアクセル役、RESTはブレーキ役となり、分化の時期を調節している。遺伝子変異によりCHD8が減少すると、RESTによるブレーキがいつまでもかかった状態となり、神経の発達が遅れる」としている。
(2016/9/9 05:00)