[ オピニオン ]
(2016/9/9 05:00)
独占禁止法の課徴金制度の見直しが進んでいる。公正取引委員会の研究会が示した論点は、規制当局による裁量制導入などで課徴金の制裁を強めるもの。これに対して経団連、経済同友会、全国中小企業団体中央会などが反発している。不公正な取引を追放するためには制裁強化だけでなく、企業が自ら協力しやすい環境を整えることも必要ではないか。
公取委は2006年度に課徴金の減免制度を導入した。カルテルなどの違反行為を自ら申請した企業に対して課徴金の納付を免除・減額する。同制度に基づく報告や申請は15年度までに836件に達し、一定の役割を果たしたといえる。
現在の課徴金は違反内容や業種、減免の申請順などで比率が決まっている。ただ公取委の内部には、これが硬直的だという批判があるようだ。これまで研究会では悪質な事案や、国内市場が極めて小さな外資企業に対して課徴金を増やすなどの案を検討している。逆に調査に協力した企業は減額するという。こうした増減の裁量権を規制当局が持つことで、調査しやすく制度を変えようというものだ。
不公正行為の追放は当然である。しかし手法としては納得しにくい。当局が過大な裁量権を持てば、企業は制裁の額を予見できなくなる。任意の聞き取りの中で当局が課徴金の減免を示し、企業に「協力」を強要することも想像される。
課徴金の制裁的性格を強めるのであれば、疑いをかけられた企業が当局の調査にどう対応するかを事前に検討できる仕組みがあるべきだ。現行制度では、弁護士への相談内容まで不正の証拠にされるケースがあるという。それでは企業は調査に対して過度に身構えてしまう。
そもそも、こうした規制は当局の権限強化ありきではいけない。欧州のように企業に自主的に調査をさせ、結果報告を求めるような不正の抑止方法も検討してはどうだろう。
公取委は今後、見直しの具体化に着手するとみられる。産業界の反発を十分に考慮し、公正な制度設計をお願いしたい。
(2016/9/9 05:00)