[ オピニオン ]
(2016/9/16 05:00)
日銀は20、21の両日に開く金融政策決定会合で、2013年度から講じている異次元緩和の「総括的な検証」をまとめる。7月の全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年比マイナス0・5%と、日銀が掲げる物価上昇目標2%に遠く及ばない。むしろマイナス金利で金融機関の収益が悪化するなど副作用が顕在化している。デフレ脱却の遅れは原油安や円高が主因なのか、そもそも異次元緩和が限界に達したのか。日銀には説得力ある検証が求められる。
日銀は今回の会合で、2%の物価上昇に向けて追加の金融緩和を模索するとの見方が市場では有力だ。日銀が超長期の国債買い入れを抑制し、資産運用難の金融機関に配慮する選択肢なども取りざたされている。
だが金融政策の調整だけで経済の好循環が回り始めるとは想像しにくい。そもそも金融緩和が企業や家計のインフレ期待を醸成し、設備投資や個人消費を喚起するというシナリオが十分に機能していない。足元の消費者物価は水面下に沈んでいる。
原油安が物価抑制の主因という分析も妥当性を欠く。中国はじめ新興国の経済の下振れリスクや円高、鈍い賃上げ率も物価上昇の抑制要因だが、それだけでは説明できない。0%台前半とされる日本の低い潜在成長率を引き上げ、実需を拡大することで自律的な経済成長を継続しなければデフレ脱却の道筋はみえてこないだろう。
金融・財政政策に過度に依存した経済政策「アベノミクス」を見直し、業界の既得権益と対峙(たいじ)した構造改革を強力に推進することが肝要だ。その意味で、新設した政府の未来投資会議が17年半ばにまとめる成長戦略に期待したい。働き方改革はもとより、人工知能などを活用した第4次産業革命を推進して企業の投資機会を増やしたい。
金融庁は9年後の25年に、地方銀行の6割が赤字転落すると予測する。マイナス金利の副作用だ。この予測を覆し、地域経済を活性化するためにも、政権は金融、財政、構造改革の三つの施策を今度こそバランスさせてもらいたい。
(2016/9/16 05:00)