[ オピニオン ]
(2016/10/20 05:00)
大手メーカー出身の地域研究支援機関のトップに水素社会を取材した。新たな技術が日本の可能性を高めるという話に、幸せな気分になった。振り返れば最近、明るい未来を語る人をみかけなくなった。
「バブル景気」がはじけて「失われた20年」が始まった1990年代前半。不況のまっただ中だったが、当時お会いした中小企業の社長の多くは将来を見据え、時にジェスチャーを交えつつ、自社と日本の未来を熱く語ってくれた。
社員に言えない悩みやグチ、苦労話や社員の家族まで背負うことの重圧を漏らす人もいた。しかし気持ちが落ち込んだ後でも、彼らは「この技術・製品が広がれば世間はこうなる」という話題になると目を輝かせた。
今になって考えてみれば、新米記者相手のホラ話もあったろう。ただ楽しい夢を見させてもらったことには違いない。春秋子も馬齢を重ねたが、当時の幸せな気分のお返しに、今後は意識して明るい未来を語ろうと思う。
全国の壮年・熟年世代の皆さんにもお願いしたい。「そんなものが成功するわけはない」と長年の経験で否定するのではなく、若者が元気になる話を心掛けてはどうか。それで景気が少しでも上向けば、こんなに安い刺激策はほかにない。
(2016/10/20 05:00)