[ オピニオン ]
(2016/10/27 05:00)
世界遺産の社寺で知られる栃木県日光市は今が紅葉のシーズン。訪れる外国人は多いものの、駅周辺の店が閉まる時間が早く、どこか寂しい。
地域自慢の食材を楽しんでもらえないのは残念だ。厳しい戒律に従うイスラム教徒や、厳格な菜食主義者にも味覚を満喫してほしい。栃木県主催のビジネスプランコンテストで特別賞に輝いた芦川春香さんは、そんな夢を抱く。
日光生まれの芦川さんは米国でホテル・レストラン経営を学び、日本の食や文化の豊かさを再認識した。しかし現実には著名観光地ですら多様なニーズに対応できていない。そこで家族や留学生らと来春、日光駅前に食堂を開く計画を立てた。
地元では2020年の東京五輪を前に「金谷ホテル」の東武鉄道による買収、高級ホテル進出など観光産業の話題が豊富だ。行政面ではガイドの語学研修や多言語標識の整備など、多様な文化への対応が課題になっている。
芦川さんは自分の店を、あまねく地球の人々が憩えるようにと『アーサンズ・カサ』と名付ける考え。カサはスペイン語の“家”と、雨風をしのぐ傘を掛けた。調理法を勉強しつつイスラム食の認証取得などを急ぐ。若者の草の根の活動が、日光の四季の魅力に色を添える。
(2016/10/27 05:00)