[ オピニオン ]
(2016/11/8 05:00)
東京電力パワーグリッド、日立製作所、パナソニックの3社が、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)の共同実証試験に乗り出した。IoT(モノのインターネット)に基づく電力データの活用を日本が主導し、新たな生活者サービスの創出につなげたい。
東電などの実証は、家庭から収集した電力情報を警備会社や宅配事業者などの第三者に提供し、“価値のあるデータ”にする情報基盤(プラットフォーム)を構築するもの。期間は2017年3月までで、関東の約100世帯に参加してもらう。
日立は家庭ごとの電力使用の情報を収集し、外部サーバに蓄積して分析する。パナソニックは宅内での機器間の情報通信を担当する。
家庭の電力使用パターンの解析によって、サービス事業者は実態やニーズに合ったサービスを提供できる。例えば高齢者の見守りサービスが想定される。照明が日中も点灯していたり、在宅しているはずの時間帯に家電が動いていなかったりなど、日常と違う挙動があると警備会社に出動を要請する。
また洗濯機の消費電力量が普段と違えば、故障の前兆とみなせる。家電販売店にもこのデータを渡せば、分析に基づいて最適な商品を提案できる。
従来のHEMSは電力使用量の常時監視が主眼だった。ただ使用量をスマートフォンで確認できても、個々の家庭に節電行動を促す程度の効果しかない。東電など3社の実証は、収集した電力使用パターンをビッグデータとして解析することで別の価値を生み出すものだ。
分電盤の電流の波形から、家電ごとの電力使用量を特定する新たなセンサー技術を採用することも見逃せない。機器ごとのセンサーは不要となり、導入の負担が小さくなる。この機能を内蔵した分電盤が普及し、多くの情報が集まるほど、新サービス創出の可能性が高まる。
生活様式が分かる電力データはサービス事業者にとって貴重だ。3社の実証をきっかけに、日本から新事業が生まれることを期待したい。
(2016/11/8 05:00)
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