[ オピニオン ]
(2017/2/23 05:00)
埼玉県深谷市の渋沢栄一、静岡県湖西市の豊田佐吉ら地域ゆかりの実業家を紹介する記念館が人気だ。栃木市の栃木商工会議所は日立製作所の創業者、小平(おだいら)浪平の功績をたたえた“生誕の地”の町おこしに乗り出す。
1874年(明7)生まれの小平は自前技術にこだわり、36歳で国産初の5馬力誘導電動機を開発、技術立国の礎を築いた。「やせても枯れても自分でつくる」という言葉は日立のモノづくり精神の支柱として受け継がれている。
日立は栃木に工場を構えるが、創業の地は隣県の茨城県日立市。長男ではなかった小平が“創業家”にならなかったことも、出生地とのつながりを希薄にした。「近代日本の発展に貢献しながらも、戦後の公職追放もあって地元で顕彰されないままきた」と栃木会議所会頭の大川吉弘さん。
栃木市は明治初期には県庁が置かれ、商業と金融で栄えた。会議所も創立125年だが、激動の中でかつての会頭企業の7割が転廃業した。小平の顕彰で「経営革新を促したい。起業家魂を学ぶ契機になれば…」
小平記念館はすでに日立市にある。栃木市に残る生家などを通じ、小平の精神を地元の若者にどう伝えるか。郷土の偉人を顕彰する手法にも知恵が試される。
(2017/2/23 05:00)