[ オピニオン ]
(2017/3/10 05:00)
東日本大震災からの復興に向け、地元産業界が新たな成長戦略を打ち出した。これが地方再生の全国モデルとなることを期待したい。
東北7県の企業や団体で構成する東北経済連合会は、1月に策定した将来ビジョンで、2030年の地域の姿を「自立的・主体的で、内からわきたつエネルギーに満ちあふれる」と表現した。中央依存から脱却し、震災以降、変化した人々の価値観や危機感をバネに、地域経済を持続的に成長させようという強い決意が感じられる。
注目されるのは、インフラ整備などのハードウエア偏重や理念先行と一線を画した実効性重視の姿勢である。地域産品の輸出拡大や観光の基幹産業化など東経連を中心に取り組む施策を具体的に示し、画餅に終わることのないよう達成度を毎年検証することにしている。
震災から6年。復興は16年度から「復興・創生」のステージに入った。地域差はあるものの、インフラ復旧は着実に前進した。一方で東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害は払拭(ふっしょく)されず、外国人旅行者数も低迷。販路回復もままならない地場の企業では、事業再開に要した借入金の返済に苦しむ問題も浮上している。
東北地方は、少子・高齢化や都市部への人口流出など多くの地域経済が抱える課題が最も速いスピードで顕在化している。もともとリーマン・ショック以降の生産拠点の海外移転で、東北経済は疲弊していた。
それに拍車をかけたのが、震災だ。東経連のビジョンに基づく取り組みは、震災復興という地域特有の課題としてだけでなく、人口減によって疲弊する地方経済再生のモデルケースにできるのではないか。
いわゆる“震災特需”が一段落するまでに、東北が地方創生のリーダーとして認められるには、まだ多くの努力が必要だろう。東経連の海輪誠会長(東北電力会長)は「震災前の姿に戻すだけでは将来展望を抱けない」と語る。「復興」から「創生」に踏み出すことが求められる段階に入った。
(2017/3/10 05:00)