[ オピニオン ]
(2017/3/21 05:00)
業界の垣根を越えて英知を結集し、重大な工場事故を根絶してもらいたい。
「ご安全に!」―。製鉄所やコンビナート、造船所など工場内でのあいさつは独特だ。重工業関連の大手各社の安全への取り組みは長い伝統を持つ。工場での事故は、過去数十年の時間軸でみれば大きく減った。
ただ2016年初めに鉄鋼大手で死亡事故が相次いだように、今なお製造現場では尊い命が失われる事例がなくならない。鉄鋼業界の場合、重大災害による死亡者数はここ数年、増減を繰り返しており、下げ止まっているとの評価だ。
こうした現状を打破すべく、経済産業省や厚生労働省は、安全対策に関する官民協議会を立ち上げた。鉄鋼、化学、非鉄、セメント、製紙、石油、自動車の各業界団体から企業の経営者層が参加した。
協議会では業界横断的に情報を共有するとともに、現場での教育やリスク評価、老朽化した設備への対策などを協議し、安全に関するノウハウを発信していく予定だ。中央労働災害防止協会も、この事務局として参画する。
異業種が集まったからこそ、できることを着実に進めてほしい。例えば議論の中では、業界をまたいだ共通の安全指標を設け、自社の安全水準を他社と客観的に比較できるようにすることを検討している。
これを第三者機関の評価に基づいてランキングにすれば、安全対策に取り組む企業の士気を高められる。業界内で、どんな企業に学ぶべきかも分かるようになる。また業種を超えた優良事例の共有もしやすくなるに違いない。
安全水準が高いことで得られる経済効果や社会的評価を“見える化”することもたたき台に上がっている。これも有効な施策といえる。安全が収益や企業価値の向上につながることがより明確になれば、安全投資の積み増しも、よりスムーズになると期待される。
安全と収益の好循環が生まれれば、重大災害ゼロへの道が開かれるだろう。
(2017/3/21 05:00)