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[ 科学技術・大学 ]
(2017/5/15 05:00)
神奈川県立産業技術総合研究所の金子智主任研究員とジャパン・アドバンスト・ケミカルズ(相模原市中央区)、東京工業大学の吉本護教授らの研究チームは、触媒が不要で、基板上に直接成長できるグラフェンの新しい合成法を開発した。二酸化炭素(CO2)で酸化させる手法で、均一な膜を1層ずつ1分と短時間で効率良く作れる。高品質なグラフェン素子の大量生産に道を開く。米化学会発行の科学誌ACSオメガに掲載された。
研究チームは、酸化剤としてCO2を満たした低温の雰囲気中において、原料となるグラファイト(黒鉛)にレーザー光を当て、絶縁基板であるチタン酸ストロンチウム上にグラフェン膜を蒸着法で1層ずつ成長した。
グラフェン薄膜を作製するには、主に化学気相成長(CVD)を活用するが、1層を作製するのに数時間かかる。これに対し、開発手法は、1層当たり約1分で1層ずつ成長させられる。
段差のある基板を使い、段差端から成長が始まるグラフェンが基板を覆い尽くす前に成長を止めることで、半導体素子などとして使いやすいワイヤ状にできる。厚さ約0・33ナノメートル(ナノは10億分の1)の1層の膜の状態を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、グラフェンの構造である、規則的に並んだ炭素のきれいな六員環が確認できた。
グラフェンは2004年に発見された原子1個の厚さのシート状の炭素材料。グラフェン薄膜の作製には、グラファイトからテープで機械的に引きはがす手法や、金属触媒を使って高温のCVD法で作るといった手法がある。だが、こうした方法は制御が難しかったり、素子の作製には、膜をはがして貼りつける「転写」が必要になったりするなど実用面で課題があった。
(2017/5/15 05:00)