[ オピニオン ]
(2017/6/23 05:00)
米シリコンバレーの駐車場で、最新鋭の警備ロボットが酔っぱらいに突き倒された。「転ぶと起き上がれないんだよね」。かつて取材したヒト型ロボットの開発者の嘆きがよみがえった。
手や足で体を支えて起き上がる。人間なら、ほぼ無意識の動作がロボットには難しい。産業技術総合研究所によると「身長120センチメートル以上になると、慣性力の影響でバランスを取りながら動作させるのが難しい」とか。
ロボットは宇宙空間や原子炉の廃炉など、人間が近寄れない場所での活躍が期待されている。シリコンバレーの場合、犯人への警告音で異常を察知した係員が駆けつけたが、危険エリアでは誰も助けてくれない。
グーグルの人工知能は計算能力に加え、人の“直感力”に近似した機能を盛り込むことで囲碁の世界トップ棋士に完勝した。遠からず多くの分野で、ロボットが重要な判断を下すようになるだろう。しかし、文脈や背景を含む言語理解や機転を利かすことは、まだ人間に及ばない。
高速バスの悲惨な事故は、自動運転なら防げただろうか。山や海での遭難時にドローンで救援物資を届け、負傷者を搬送できないか。人間とロボットが得手不得手を補い、共存する社会を目指したい。
(2017/6/23 05:00)