[ ロボット ]
(2017/7/7 05:00)
掘削マシンをロボット化
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しが最難関とされる。燃料デブリの姿はとらえられておらず、レーザーや切削などさまざまな技術が開発されている。大成建設は切削技術を開発。岩盤掘削のボーリングのノウハウを詰め込んだ。デブリ切削技術の開発を通して、岩盤掘削の技術も進化させた。
【安全に取り出す】
核燃料は原子炉圧力容器を溶かして落下し、その下にあった装置や土台を溶かして混ざり合い複雑な性状の物質になっていると想定されている。デブリの様子がわからない以上、どんな状態でも安定して破砕し、安全に取り出す手法が模索されている。大成建設は米国のスリーマイル島の原子力発電所燃料除去で実績のある切削法を採用した。原子炉建屋の最上階から約35メートル下に切削工具を降ろして床に広がったデブリを削る。ロボットアームだと巨大で重くなってしまう。そこでボーリングマシンをロボット化した。
原子力本部の進藤彰久技術顧問は「岩盤工事では深さ500メートル掘る。ボーリング屋にとって35メートルは短い仕事」と説明する。ボーリングマシンなら切削用のロッドを継ぎ足して35メートル下まで到達し、その周囲をケースで覆った状態でデブリを削れる。切削液が冷却液の役割を果たし、切削粉はスラリーとして吸引して遠心分離やフィルターにかけて回収する。切削粉として回収すれば保存容器への充填率も高められる。
【手探りの作業】
課題は35メートル下のデブリが見えない点だ。燃料デブリの近くは放射線量が高く、カメラの画像センサーがすぐに劣化してしまう。カメラに依存するシステムを設計すると交換やメンテナンスの頻度が増える。ボーリングなら切削工具の反力でデブリの形状や位置を推定できる。切削工具を押し当てる力と切削深さを計測しながら、手探りで少しずつデブリを削る。
【性能検証】
切削効率が下がれば工具が寿命を迎えたと判断できる。硬く刃が入らない部分は打撃で砕く。進藤顧問は「セラミックス部分は硬いが割れやすい。打撃と切削を組み合わせられる点もボーリングの利点」と説明する。この切削位置や切削速度などの制御は自動化する予定だ。
すでに切削工具やロッド部品の自動交換機能は開発した。セラミックとステンレスのデブリ模擬体で切削性能を検証。現在の切削効率は毎分0・5ミリメートル程度。工具の設計修正などで毎分2ミリメートルに向上させる。現場には毎分5ミリメートルに高めて投入したい考えだ。進藤顧問は「開発を通して硬いセラミックスと粘る金属を削る技術を蓄積した。岩盤掘削に転用すればサクサク岩盤を掘れるようになる」と胸を張る。廃炉と土木の技術開発を両立させている。
(2017/7/7 05:00)