[ オピニオン ]

社説/水俣条約、8月に発効−世界の水銀対策でリーダーシップを

(2017/7/10 05:00)

水銀の取り扱いを規制する「水銀に関する水俣条約」が8月16日に発効する。水銀は途上国で金の採掘・抽出に使われ、いまだに健康被害を引き起こしている。水俣病という苦い経験を持つ日本の対策技術を生かし、世界に貢献したい。

水俣病は1956年に熊本県水俣市で発見された公害病の一つ。工場排水に含まれていたメチル水銀が魚介類に蓄積され、食べた人が有機水銀中毒になり、多くの被害者を出した。

水銀は古くから使われてきた金属だが、有害性があり、国境を越えて循環することが分かっている。地球温暖化の主因である二酸化炭素(CO2)と同様に先進国に代わって途上国からの排出が増え続け、地球規模のリスクとして認識されるようになった。

国連環境計画(UNEP)は2001年に水銀汚染対策の議論を開始。02年に環境や人体への影響をまとめた報告書を発表し、水銀管理に向けた動きが活発化した。10年に条約制定に向け政府間交渉が始まり、13年に熊本市と水俣市で開かれた国際会議で水俣条約が採択された。

日本は水銀汚染防止法の制定や大気汚染防止法改正などの準備を進め、16年2月に条約を締結。5月18日に締約国数が要件の50カ国・地域に達し、90日後の8月16日の発効が決まった。

水俣条約には製品と製造工程での水銀使用の削減・禁止や、大気、水、土壌への排出削減などが盛り込まれている。日本は採掘から利用、廃棄までリスク管理を徹底する法制度を整えており、一部を除き条約発効と同時に施行となる。

水銀の扱いについて日本が貢献できる部分は大きい。日本の化学メーカーは水俣の経験もあり、工場から水銀を排出させない高度な技術を確立している。条約発効で途上国にも規制の網がかかるようになれば、必然的に日本の技術が求められるようになる。

環境技術移転の機会が広がり、日本の環境協力のあり方も一段と多様化する。水銀以外の有害な化学物質や重金属を扱う手本にもなるはずだ。

(2017/7/10 05:00)

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