[ オピニオン ]
(2017/7/24 05:00)
郷里の山口県に「さんばい」という郷土料理がある。薄切りにしたレンコンを湯がいて、ニンジンやコノシロと酢であえる。紅白が鮮やかなハレの日の家庭のごちそうだ。
祖母はとうに亡くなり、体調を崩した母も、あまり料理をしたがらない。しばらく口にしていなかったが、そのレシピがインターネットで簡単にみつかったのには驚いた。
スマートフォンが普及してよかったと思うことの一つが料理である。ありとあらゆるレシピを台所で検索できる。ノートパソコンでは、包丁や鍋を使いながらレシピを探すのは難しい。
若い世代に郷土料理はあまり人気がないが、そんな需要の少ない情報でも、低コストで網羅的に掲載できるのがネットの良さだ。故郷の味の情報はうれしく、塩を多めにきかせると祖母の味に近づくことも分かった。黒豆や豚の角煮を作りすぎてしまったこともある。
ただレシピがあっても、同じ味が再現できるわけではない。祖母の得意だったおはぎにノリのつくだ煮、大きな押しずし。春先に祖父が収穫したシロウオ。今やいくらカネを積んでも二度と食べられない。祖父や祖母の姿とともに蘇(よみがえ)るごちそうの思い出に再会できるようなサービスはないものか…。
(2017/7/24 05:00)