[ オピニオン ]
(2017/8/30 05:00)
29日早朝、北朝鮮が再び弾道ミサイルを発射した。北海道の渡島半島上空を通過し、襟裳岬東方約1180キロメートルの太平洋上に落下した。沖縄以外の日本上空を通過したのは2009年4月以来という。
ミサイル発射のたびに思い出すのが、作家・筒井康隆さんの『アフリカの爆弾』(角川文庫)である。主人公は電機メーカーの駐在員で、アフリカの小さな村が独立した国にいる。
ある時、隣国が核ミサイルを買ったことを聞きつけたその村の酋長(原文まま)は、対抗して国連軍から中古品を買う。大国が闇で売りさばき、国連軍が横流ししていた。威力は広島型原子爆弾の25万倍という5ギガトン。主人公が酋長らと中古品を運ぶドタバタ劇だ。
道中でゴリラにミサイルを奪われた。〈「もうこんなことはいやだ。やめなければならない。もうこんなことはやめなければならない。いやだ」私は泣きわめいた。だが、いくら原水爆反対を叫んだところで、私の力ではどうにもならなかった。ミサイルを持っているのは、傷を負ったゴリラなのである〉。
SF小説とはいえ、50年近く前に核とミサイルの拡散を戯画化し警鐘を鳴らした。北朝鮮がゴリラとは言わないが、「こんなことはいやだ」と切に思う。
(2017/8/30 05:00)