[ オピニオン ]
(2017/9/19 05:00)
電力の完全自由化以降、中小企業の多くが利用している高圧(業務用)電力の料金も低下傾向にある。しかし、その恩恵を得るには適宜、電力事業者から見積もりを取り直すなどの自助努力が必要だ。
中小の工場やビルが利用する高圧電力は2004年から自由化され、新電力にも豊富な実績がある。8月発表の需給速報によると、従来の電力各社から新電力に切り替えたスイッチング率は、特別高圧(大規模工場・ビル)を含めて13・14%。これは低圧(家庭用)電力の5・06%を大きく上回る。
高圧電力の自由化の最初の段階では、既存電力が料金を引き下げて新電力に対抗した。高圧の中でも最も小さな契約電力500キロワット未満の需要家は、スイッチングしなくても料金メリットを受けられた。
16年4月の電力小売りの完全自由化は、すでに自由化されている高圧電力にも予想外の影響を及ぼしている。家庭用電力への新規参入で発電所が増え、固定価格買い取り制度が軌道に乗ったことで再生可能エネルギーの供給も上向いた。このため新電力の有力な供給源である卸電力市場の取引価格は、低下傾向にあるからだ。
しかし、この電力の卸価格の低下は、残念ながら高圧の需要家に直ちに恩恵をもたらす仕組みにはなっていない。
高圧電力の契約は事業者と需要家が相対で決めるため、その内容は部外者には分からない。ただ現在の新電力の高圧契約では、基本料金を既存電力より安く設定する一方、従量料金は同額とするメニューが一般的だ。
この方式だと需要家は、契約時点で料金の削減額が確定するメリットがある。ただ、その後は燃費調整による従量料金の変動以外はない硬直的な料金体系のままだ。
電力自由化の恩恵を受けようとすれば、部品や素材の購買・調達と同様、市況をにらみつつ、複数の電力会社の料金提示を比べる必要がある。消費電力が少ない中小企業にとっては面倒もあるが、これも自由化による社会的な変化といえる。
(2017/9/19 05:00)