[ オピニオン ]
(2017/9/20 05:00)
土地は人々が集ってこそ富を生む。国土交通省がまとめた2017年の基準地価(7月1日時点)によると、全国の商業地の地価が10年ぶりに上昇に転じた。日本経済全体を底上げするためにも、土地を使いやすくする環境整備を進め、価値を高めたい。
都道府県が公表する基準地価は、国の公示地価(1月1日時点)とともに土地取引の指標となる。公示地価が主に都市計画区域内の土地を対象にしているのに対し、基準地価は都市計画区域外の林地などを含み、国内の平均的な地価動向を把握できる。
東京、大阪、名古屋の三大都市圏の商業地は前年に比べて平均3・5%上昇し、東京・銀座の最高額地点はバブル期の90―91年を上回った。商業地は三大都市圏に加え、札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢4市がけん引し、前年比0・5%上昇。一方、住宅・工業地を含む全国・全用途では、マイナス幅が8年連続で縮小したものの、同0・3%下落した。
注目されるのは地方中枢4市の地価上昇率だ。4市の商業地は同7・9%上昇し、三大都市圏を4・4ポイント上回る。住宅地も三大都市圏の同0・4%上昇に対し、中枢4市は同2・8%上昇した。三大都市圏では開発適地が減り、事業用地の確保が難しくなっていることも背景とみられ、地方圏で人口増加が続く中枢4市の不動産需要が高まっている。
実際、全国の用途別地価上昇率トップ10の中に、住宅地で三大都市圏は入っていない。商業地も20%超を記録した銀座の基準地はランク外で、東京圏はない。住宅地の1位はスキー場があって海外富裕層の別荘需要が旺盛な北海道倶知安町、商業地1位は訪日外国人観光客に人気を集める京都市伏見区の伏見稲荷大社近くの基準地だ。
他方、土地を巡っては不動産登記が更新されず、所有者不明で地域の再開発を妨げている事例もある。国交省は今月、この問題を検討する有識者会議を創設しており、早期の制度見直しを進めてもらいたい。
(2017/9/20 05:00)